Star Face 【フリーダビング世界記録保持者:木下紗佑里さん】

 

大村市出身。3歳まで神奈川県横浜市で過ごす。その後、大村市に。ご両親がウォーターメイツスイムクラブを開業。富の原小、桜ヶ原中、諫早商高、日本女子体育大で体育教師になるために勉強。教育実習では諫早商業高校にも。大学卒業後、埼玉県内の大手スイミングスクールに就職し3年目になる年に退社し、2013年にフリーダイビングと出会いわずか2年後の2015年世界選手権で優勝。翌2016年には世界新記録樹立。現在は拠点を沖縄県に移しフリーダイバーとして世界中の海で活躍する29歳。


大村出身のさまざまな形で活躍している方へインタビューということでスタートしたコーナー。
第1回目はボンベをつけず、ひと呼吸で潜れる深さを競うスポーツ「フリーダイビング」世界記録保持者の木下紗佑里さんにインタビューしてきました。

Q1フリーダイビングを志すきっかけ

A1始めたきっかけは2013年2月。雑誌に載っているのを見て、面白そうだなと思って電話をして「体験させてください。」とお願いしたのがきっかけです。実際体験した時に感じたのは、今までずっと水泳をしてきたんですけれど、息を止めて浮かぶということが私の中ではとにかく新鮮で、私の中で初めての感覚だったんです。新しい扉が開いた感じでした。



Q2世界記録を樹立した大会(中米のバハマ・ロングアイランドのDeans Blue Holeで行われたフリーダイビングの国際大会「Vertica Blue2016」)でのことと潜っているときはどういうことを考えていましたか?

A2前日に申告しているため私が世界記録に挑戦することは周りの方は知っている中での挑戦でした。潜ってから水面に上がってくるまでに3分14秒ぐらいだったと思います。潜っているときは考え事をそれなりにしているんですが、考えることというより海の流れとか自分の体がどうなっているのかななど感じているという感覚ですかね。酸素大丈夫かなとかは考えたりしたことはないですかね。そういう考えをした場合に気持ちよく潜れませんので、常に今は大丈夫、先のことは心配しないという形で行っています。


Q3記録達成時はどんな感じだったんでしょうか?

A3上ってきたときにあっ水面が見えたなと思いましたが、ちょっと酸素が足りていない状況で上がった時にボーっとしていてイマイチ景色を覚えていなくて半分意識がない状態だったように思います。そういう中、「Im OKアイムオーケー」の声とポーズが確認され世界記録達成となりました。






Q4今までで一番印象に残っていることはありますか

A4ん~難しいですね。過去のことはすぐ忘れてしまうので(笑)昨年の世界記録出したときのことも遠い昔のような感じなんで。過去のことってどうでもいいので。その時その時一番近い過去のことが印象深いですかね。練習の時でも試合の時でも、毎回潜るたびに感覚がちがうので、そこに面白みを感じます。その時々で思うことや感じることかその時の自分の精神状態、身体も違うから毎回同じようにはいかないんです。そこを分析するのが楽しいんですよね。一番と言えば昨年の世界記録を出したときのそこまでの過程ですかね。この大会に向けて1年前からずっと気持ちを整理してきたんで、そこから大会までの道のりが私にとってすごい大きな経験だったなと思いますね。特に最後の3カ月ぐらいは練習でも失敗したり潜れなくなったりだとかあって・・・。そこからどうやって自分の気持ちを立て直そうかなということを1か月ぐらい自分と向き合った時間がすごくありました。その期間は頑張ったなというかなかなかそういう経験は出来ないのでいい経験だったなと思います。
精神的な部分が大きく占めているのでいつも世界記録の72mまで潜れるわけではないし、潜れる気持ちではないから潜っていませんけど・・・。


Q5世界記録を達成した時のプロセスではしっかり自分の中ではまったという感覚があったんでしょうね

A5そうですね。この時は本番の1か月前に72mを一回失敗してブラックアウトしているんですよね。その後に全然怖くて潜れなくなった期間があって、その時、72mを潜ることが私がしたかったことじゃないと言い聞かせていたので失敗してもうまくいかなくてもこれでいいよと言えて来た結果、本番当日の72mを挑戦した時は私が感じたかったのはこの空気感なんだと。これを感じるときには成功するんだなとのっていけたのはよかったなと思います。どうしても記録記録となっちゃいますので、そこは忘れないようにしたいと思います。私はそこが一番楽しみたいポイントです。


Q6各地の海で潜るうえで違うことってあるんですか?

A6違いますね。海も違うし、その土地や国の空気感だったりとか、天候もそうですしね。知らない海での大会の挑むときは早めに現地に入ってそこの海で調整したりします。


Q7日々のトレーニングや練習はどこでどんなことをしているのでしょうか

A7練習はフリーダビングができる環境に自分をおいて、もちろん一人ではできませんのでチームメートや仲間を集めて、海の深いところで練習します。夏場は沖縄、今のように冬場だったらフィリピンで練習しています。大会前は大会が行われる現地に1か月前に行って練習します


Q8木下さんがおススメする大村のココが好き!を教えてください

A8ありますよ。大村、大好きですよ。特に高校時代まで住んでいた時には気づかなくてただ住んでいる場所という感じだったんですが、自分が県外や海外に出て大村に帰ってくると、何がいいかっていうと一番は人がすごくいいですよね。みんな優しい。ギスギスしていないし、沖縄となんか似たところがあるなと。あと、大村・長崎は美味しいものもあるし魚も獲れるしここで完結するというところですね。私の周りにいる人には大村で頑張ろう、何かをしていこうという人と出会うことが多いですね。その熱意を持っている人が多いので、帰ってくるたびに私も頑張ろうと思えます。
私は大村で頑張ることはできないけれど、外で頑張ろうと思わせてくれる場所ですね、大村は。


Q9大村の思い出の場所などはありますか

A9私はよく海に行っていましたね。家族と喧嘩した時に。富の原のところの海なんですけど夕日がキレイでそこに行くと、嫌なことや悩んでいたりどうしていいかわからない時にそこの海で深呼吸をするとまっいいかってなってスッキリして帰ってきていました。


Q10今後の目標を教えてください

A10競技としてはずっと世界記録は自分のできる範囲で守っていくことと記録を常に狙っていくため世界記録を目標に練習していくことです。2017年は体調もコンディションもよくなく世界記録を一つも獲れなったのですごく反省しています。その状況を1年間過ごしていく過程で来年はいけるなというのが私の中であって、3種目の世界記録、たぶん軽くいけちゃうと感じているので狙っていきます。あとは、フリーダイビングを始めて4年経って、スポンサーさんも付いてくれているので安心してこれからも活動していきたいです。来年が5年目の年。大村に定期的に帰ってきて子供たちに私がこれまで経験してきた伝えれることや悩みを解決するヒントなどを話す機会を多く作りたいです。そして、初心を忘れず成長していきたい、できることを増やしていきたいと思っています。


Q11Face大村の読者にメッセージをお願いします

A11私は大村に帰ってくるたびに、アーケードとかで声を掛けてくれたりしてもらうことがとても嬉しくて、みんが喜んでくれたとか見てくれているとか思うとそれが私の頑張る原動力になっています。結構フラフラ歩いていることもあるので気軽に声かけてください(笑)



☆今後出場する大会の情報など

5月末:ホンジュラスで開催の「Caribbean Cup2018」
7月末:バハマで開催の「Vevtical Blue2018」
3月に大村にまた帰ってきますのでFacebookやインスタグラムの公式ページをチェックしてください。




*インフォメーション
ひと息で挑む紺碧の世界~さらなる深海へ 世界記録72mを樹立しても、まだその先をみてみたい~
2017年6月15日発売
・2016年4月、一人の日本人女性がフリーダイビングで世界記録を打ち立てた。彼女はなぜ潜るのか。なぜ世界新記録を更新できたのか。
フリーダイビングを通じて感じたこと、競技や大会のことなどを綴る。美しい海中写真も満載です。
大村市のウォーターメイツで販売中です。



フリーダイビングとは・・・ひと呼吸で潜れる深さや泳いだ距離などを競うスポーツ。木下さんは6種目ある中のフィン無し平泳ぎで深海に潜り、海面に再び浮上する最も過酷な種目【CNF】で2016年日本人初となる世界新記録を樹立。そのバハマでの国際大会には世界約25か国から30名~40名の選手が出場。ルールは前日に時間・メートルを事前に申告する。試合当日は指定された時間内の30秒以内に潜らなければいけない。海の競技の場合は水面下にあるタグを取ってきて水面に上がってきた際に15秒以内に「I’m OK」と指のポーズと共に発すること。上がるときにロープを握ったりすると失格となる。

競技6種目

【コンスタント・ウェイト・ノーフィン(CNF)】木下さんの記録72mは世界記録【2016年4月26日バハマでの国際大会時に樹立】
・海での垂直泳ぎフィン無し〔呼吸を止め、フィンをつけることなく自身の泳力だけで垂直に何メートル潜れるかを競う。潜水中、ウェイトの量を変えてはならない。またガイドロープをつたって潜降、浮上してはならない。〕

【コンスタント・ウェイト・ウィズフィン(CWT)】木下さんの記録97mは日本歴代2位
・海での垂直泳ぎフィン有り〔呼吸を止め、フィンをつけて自身の泳力だけで垂直に何メートル潜れるかを競う。潜水中、ウェイトの量を変えてはならない。またガイドロープをつたって潜降、浮上してはならない。〕

【フリー・イマージョン(FIM)】木下さんの記録85mは日本記録
・海でのガイドロープ垂直潜り〔呼吸を止め、フィンを装着せずにガイドロープをつたって垂直に何メートル潜れるかを競う。潜水中、ウェイトの量を変えてはならない。〕

 ○【ダイナミック・アプネア・ウィズフィン(DYN)】木下さんの記録158m
・プールでの水平泳ぎフィン有り潜水〔呼吸を止め、フィンをつけて泳ぎ、水平に何メートル潜水できるかを競う。〕

 ○【ダイナミック・アプネア・ノーフィン(DNF)】木下さんの記録144m
・プールでの水平泳ぎフィン無し潜水〔呼吸を止め、フィンをつけること無く泳ぎ、水平に何メートル潜水できるかを競う〕

 ○【スタティック・アプネア〔STA〕】木下さんの記録6分28秒
・プールでの息止め〔呼吸を止め、水面に浮き、その時間を競う。〕