お盆の由来〈盂蘭盆(うらぼん)〉
目蓮(もくれん)という釈迦の弟子が、修業中に神通力を使って亡くなった母の姿を一目見ようと探したところ、母は餓鬼道に落ちて飢えに苦しんでいました。目蓮が母を救う方法について釈迦に相談すると「自分の母から7代前の祖先に対して食べ物などをお供えし、僧侶に布施すれば母は救われるであろう」と答えられました。そのことにより目蓮が供養を行ったのがお盆・盂蘭盆の始まりだそうです。
お墓で爆竹や花火をする理由
中国でお正月などに爆竹を鳴らすのは、悪を寄せ付けないという意味があります。長崎が寛永12年(1635)に中国船の寄港地と定められ、中国との貿易のために中国商人が出入りするようになってから中国人が花火や爆竹を使用する様子を長崎の人が目にする機会があり、それをお盆に取り入れたと考えられています。唐寺で行われた「ボサ祭」と呼ばれる媽祖の誕生祭では、儀式の途中から爆竹が鳴らされ、儀式のあとに宴会が開かれるという習慣がありました。従って、江戸時代初期から長崎ではお盆になるとお墓の前で宴会を開いて花火や音火矢を揚げ、冥土(あの世)からご先祖様が帰ってくるのを歓迎する風習がありました。他の土地から赴任してきた奉行(役人)や西洋人は、その様子を見て大変驚きましたが、こういった長崎での風習はキリスト教の取締りが強化されたのち、かなり容認されていたようです。花火を墓地でする理由としては、歓迎の意味と共に蛇や毒虫を避けるためとも言われていました。今ではないお盆の過ごし方としては、
- お墓で酒盛りをする。
- 紋付袴・正装で墓参り。
- 先祖代々の霊が各自の家に帰ってくるということから、深夜まで戸を閉ざさないで待つ。(提灯を灯すのも歓迎の意)
- 14日の朝に仏壇に供えた茄子を調べ、茄子の皮におびただしい爪の痕のようなものがついていたら、精霊様が来ている証拠(昭和初期まで)
- 「オランダばた」といって、文化元年(1804)にロシア人が飛ばした気球を見た長崎の人が、紙と竹ひごで作った気球のようなものを飛ばすことが流行してお盆にも飛ばしました。怪しい夢のようなよどんだ光の塊となって飛んだといいます。オランダばたは山火事を起こす危険があったので、大正以降には警察によって禁止されたそうです。
長崎の墓
長崎の墓域は、中国風が多い。土神を祀っていますが、土神は中国の五行の神様(風・水・火・金・地)のうち「地」の属性を持つ神です。中国では民俗信仰されており、「墓」は地の属性に入るために土地を守る神として墓域内に祀られています。
精霊流しの起源とは?
精霊流しについては未だ定説はありませんが、3つの説があります。
- 享保(1716~35)の頃。中島聖堂の儒学者・盧草拙(ろそうせつ)が、先祖にお供えしたものを菰(こも)に包んで流していたのを見た。これは霊に対して失礼だということから藁で小舟を作り乗せて流したことが記録にある。
- 唐人の彩舟流し(さいしゅうながし)から来たという説。彩舟流しは大流しと小流しの二種類があり、大流しは長崎で亡くなった中国人の霊を祀るため、小流しは航海の安全を感謝するため。
- 釈迦が全ての人を救いたいという誓いを立てましたが、このことを「弘誓(くぜい)の船」にたとえて、そこから思いついたのではないかという説。※弘誓の船…人々を苦悩の多いこの世(此岸/しがん)から輪廻の苦しみから離れて、涅槃(ねはん)させて彼岸へ連れて行くために使われると例えられた舟。
初盆をお迎えになるまでの準備
- 精霊船
8月15日に精霊様をお送りする、長崎ならではの風習。準備期間:4月末~7月中旬頃
- 室内用飾り提灯
内用に行灯灯籠・住吉提灯*などを準備します。初盆の場合は、出来るだけお飾りをし、明るくしてお迎えするのが慣わしです。近年では提灯を室内にかけるのに、室内を傷つけない吊りポールなどもあります。準備期間:4月末~7月末頃
*住吉提灯とは、博多の住吉町で使われはじめた提灯で、円筒形の長細い提灯のことを言います。主に九州や山陰・山陽地方、関東地方の一部で用いられることが多く、お仏壇の両側に吊して飾られます。 - 初盆料理
「接客用」のお料理と「精霊流し」後の慰労の宴用の料理の準備をします。準備期間:8月初旬頃までに予約
- 迎提灯・墓用提灯
精霊様が家路を辿られる時の道標となる家紋提灯。玄関先や縁側に灯す”迎提灯”とお墓に灯す”家紋提灯”が必要となります。家紋の確認は確実に。準備期間:4月末~7月末頃
- 返礼品
お参りに来られた方へのお返しの品を準備しておきます。仏様とのご関係に合わせて2種類の返礼品を準備しておくと良いでしょう。余った返礼品はお盆の後に返品できる場合もありますので、購入時に確認しておくと良いですね。準備期間:4月末~7月中旬頃
- 供花・コモ
初盆祭壇・仏壇にお飾りする生花を準備します。お盆期間中のお供えではなく、お盆前の灯籠などをお飾りする時期から準備するのが理想的。準備期間:8月初旬まで
いかがでしたか?知っているようで知らないお盆に関する豆知識。
初盆の準備期間と併せて参考にしてくださいね。